今日もまた呟き

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お看取り

ご冥福をお祈りします。
piccoloです。

先日の夜勤の時、お看取りがありました。ターミナルの方でした。徐々に食事量が減り、全く食べ物を口にしなくなって数週間。ここ数日が旅立ちと言われ、覚悟して臨んだ夜勤でしたが、この仕事に就いて初めて利用者から選ばれました。

居室から「お母さん。お母さん。」と、声がします。訪室すると呼吸の荒くなったA様の姿があります。ご家族に「どうですか?」と声をかけると、「だんだん呼吸が荒くなってるみたい」と返答がありました。しばらく様子をみていると、荒い呼吸の後に無呼吸があります。しばらくするとまた呼吸を始めます。看取りの経験はありませんでしたが、直感で間もなくだと感じました。しかしすぐに息を引き取る訳ではないと思い、しばらくご家族とA様に寄り添いました。荒い呼吸の時に「そう。呼吸して下さいね。ゆっくり。ゆっくり。」「お母さん、もう良いんだよ。楽になってね。」と、言う風に。そこでナースに連絡を入れます。「間もなくみたいです。」そう言うと、すぐに駆けつけてくれました。24時間体制でナースが勤務していると言うのが、うちのホームの強みです。

ご家族、ナース、もう一人の夜勤スタッフ、ワシで、A様に寄り添いました。やはり荒い呼吸と無呼吸を繰り返しています。少しずつ無呼吸の時間も長くなっています。手を握り、母への思いを語るお嬢様の姿。老人ホームに入居させると言う事が、こんなにも後ろめたいのかと、解っているようで理解していなかった。認知症の症状が出始めた時に、自分が居ると迷惑になると判断したA様は、自ら老人ホームに入居する事を選択したのだそうです。その事をずっと後ろめたく思っていたお嬢様は、「ごめんなさい。ごめんなさい。」と何度も謝っていました。そして、「もう頑張らなくて良いよ。安心して。」と語りかけていらっしゃいました。

奇跡が起きました。無呼吸のA様が「はい」と返事をしてくれたのです。しかし声を出す事で、苦しそうな呼吸が続きます。「ありがとうお母さん。お母さんの子で良かったです。」苦しそうな呼吸の中「はい」と返事。長い無呼吸の後に、最後の返事を聞きました。最後の返事を下さってから、静かに息を引き取られました。答えてくれた問いかけと言うのは、「今は良き夫、子供達に恵まれて幸せです。どうか、安心して旅立って下さい。」でした。お嬢様がそう最後に問いかけられた時に、最後の返事を下さったのです。

ナースからドクターに連絡がとられます。同時に施設長にも。連絡を受けたドクター、施設長はすぐにホームに来てくれました。皆に見守られながら、ドクターの診断を受けました。この日の夜中にA様は旅立って行かれました。こんなに幸せな臨終があるんだなと思いました。家族に見守られて、子供、孫も集まったその夜遅くに、静かに息を引き取られました。

ドクターが教えてくれた事ですが、どんなに苦しそうに呼吸をしていても、人間は自己麻酔をかけるので苦しくないそうです。だから朦朧とした表情なんだと。それを延命治療で命を引き延ばしてしまうと、自己麻酔が切れてかえって苦しい思いをさせてしまう事があるんだと。それを選択するのはご家族。それでも延命を望まれる方もいらっしゃいます。それぞれの選択を尊重し、ケアに当たります。今回のお看取りでは、延命はしないが最後の時には絶対立ち会いたいと言うのがご家族の願いでした。その場に立ちあって、その理由が解りました。それは『後ろめたさ』なんですね。老人ホームなんかに入れてしまった罪の意識を懺悔したいと言うのがあった気がします。幸せな臨終と思ったもう一つの理由に、そのしがらみから解いて上げるのもDr.の仕事なんだとう言う事を目の当たりにしました。「母に、お母さんが入所を選択してくれたおかげで、私たちは元気に暮らせてる事を伝えました。自分が、ホームに居て寂しい思いをさせてるんじゃないかと心配させているんじゃないか?と言う思いがあった事。でも、職員さんの姿を見る事でそんな事を決してないと思えた事、ホームに入居させて、仲間はずれみたいにしてしまった事、ごめんなさいって謝りました。最後にお母さんの子供で良かった事。全部伝えました。」そうドクターに話すお嬢様。その一言一句に「うん。うん。Aさんも解ってたと思うよ。うん。うん。そんな事ないのよ。そんな風には思ってないはず。」と、傾聴しています。ドクターの中にはいきなり叱りつけて来る人も居ました。でも、この先生は違います。同じ目線で語ってくれるのです。我々職員にでさえ「お疲れ様」と声をかけてくれるのです。家族からの信頼はとても厚いのです。

お看取りの時にA様が返事をしてくれたと表現しましたが、本当にそんな事があるのか?と言う人もいるかも知れません。確かに返事じゃないかもしれないなぁって自分も思います。ただのうめき声だったかもしれないとさえ思います。でも、そのタイミングで家族が救われるんです。そんな素敵なタイミングがありましょうか?返事だったとしても、うめき声だったしても、そのタイミングで声を出してくれた事に家族が救われるのを見届けました。正直、この仕事がイヤでイヤで仕方ないのですが、人の罪の意識さえも洗い流してしまう母の愛の深さに目から鱗が落ちる思いでした。

我々は通常の夜勤業務に戻りましたが、葬儀屋を捜したり、その後の雑務を行っていた施設長、死亡診断書を作成するドクター、真夜中に仕事される事に頭が下がります。こんな人たちがバックに居ると言う事を誇りに思うのです。

改めてA様のご冥福をお祈りします。


piccolo
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