夜勤明けのヒヤリハット
2006-08-20 10:15
今月半ばから、介護職員が胃ろう径管を落とす事になった。どうやら、看護師の手が足りないと言うのが理由らしい。五年の介護経験の中で、医療行為に踏み入る時に必ず議論になる。医療行為を行って事故があった時に責任を負えないと言うのが介護職員の言い分で、胃ろうや吸引は家族の了解のもとであれば医療行為ではないと言うのが運営や医療看護の言い分。ようは、胃ろうくらい出来ないと商売にならないのが本音だろうと思う。これから胃ろうが必要な利用者が増えれば、看護師だけでは手が足りなくなる。圧倒的に看護師よりも人数の多い介護職員にやらせれば、それだけ看護師を雇わなくていいと言うのがメリット的な見方だろう。

うちのホームに限って言えば、常勤ナースの入れ代わりの問題がある。自分が今のホームに異動してきて、しばらくしてから入社して来たお世話になったナースさんが居る。この人をAさんとする。本当は、二人の常勤体制のはずなのに、彼女1人が常勤で会社からの補充はなかった。およそ一年強の期間、彼女1人が全てのオンコールをとり続けた。オンコールとは、夜間緊急時等の指示を仰ぐ物だが、普通は一日交代でとるオンコールを、一年以上もの間1人にやらせていた会社側に問題があるだろうと思う。最近になって、体調不良が悪化し、会社を休みがちになってしまった。そこでやっと、もう1人の常勤ナースを雇った。この人をBさんとする。このBさんが最悪で、利用者の顔すら覚えない。2〜3ヶ月した現在、やっと利用者の顔と名前を覚えて来た。しかし保身的な人で、Aさんの仕事ぶりを知っている我々は、あまりにもBさんのいい加減さに呆れる毎日だった。

Aさんが信頼出来る理由に、どんなに自分が傷つこうが、体を張ってくれていた事がある。介護職員に教えなくてはならない事は、利用者から殴られても、殴られても、教えてくれた。誤嚥で心肺停止になった利用者がいても、蘇生させてしまう実力も信頼に値するだろう。今までは、この人がいたから介護職員が医療に携ることがなかったのだが、常勤ナースBが入社して来た事で業務を放り投げてしまう事が、介護職員が胃ろうを始める切っ掛けだったと言える。

休みがちなAさんは、Bさんが訴える『やってられない論』を切り返す事が出来ないと思われ、仕方なく介護職員に指導を始めた。誰がどう見ても、仕事はAさんの方が出来るし、利用者や職員からの信頼も厚い。しかし、遅刻や休みがちな勤務体制が立場を苦しくしているのだ。そこまで追いやったのは、会社かもしれないのだが、今のAさんを弁護する人はいないかもしれない。自分は、Aさんの思いや姿勢が好きだったし、ごり押しでない指導がとても尊敬出来た。今でも変わる事なく信頼している。ただ、この状況下での医療行為にはオブジェクションである。

Bさんが、サボりたいだけの介護職員への医療行為の勧め。そんな気がしてならない。もしも自分が径管を落としている時に、Bさんが煙草を吸っていたらホームリーダーや組織長を無視して食ってかかると思う。絶対に半年前の方が介護度的にも重かったし、処置も大変だった。それをおくびにも出さずに頑張って来たAさんに唾吐く態度に心底腹が立つ。

自分の担当階に、径管胃ろうで食事をする方が居る。誰が決めたのか、夜勤者が朝の径管を落とす事になった。分かっているのか分かっていないのか、モーニングケア〜食事の誘導で大忙しのど真ん中、8時に径管を落とし始めろとの指示だ。単発的に、胃ろうの事しか問題にしていない。どう言う流れで、八時を迎えるかを理解していない人たちが八時に径管を始めろと言っている事が危なかしくって仕方ない。医療事故勃発10秒前である。23時59分と言った所か。

たった一回のレクチャーで、既に介護職員が径管を行っている。自分は、過去に径管胃ろうを経験していたために、そんなに躊躇いなく受け入れているが、経験があるとかないとか、出来るとか出来ないとかではない。どんな場面に置いても、利用者が安全に過ごさなくてはいけないのだ。そこが全く無視されている。職員が医療を行うのならば、念密なレクチャーやカンファが必要なのではないだろうか?今まで医療を行った事がないホームで、この行為は自殺行為ではないだろうか?たった10分ほどのレクチャーで、今まで経験した事がない医療行為を介護職員が行っている。その理由は、先に述べた通りだ。本当に、利用者が安全に暮らせているのだろうか?ホームの体制を見ても、事故が起きた時の危機管理は皆無と言って良いだろう。ヒヤリハットやインシデント情報は魔女狩りでしかない。この状況で事故が起きたら、事故を起こした介護職員を罰して事故解決になりかねない。そんな危険な状況下、自分は径管を落とす。

今日のヒヤリハットは、自分が8時に径管を落としたが、今まで(介護職員が径管を行う前の時期)径管を行っていた10時に径管を落としそうになったと言う物だった。なぜこんな恐ろしい状況が起こるのか?

先ほど述べた、常勤ナースAさんが休みがちである事が第一。ベテラン職員が一気に辞めてしまい、新人職員が多くなっている事が第二。その中で、フロアリーダーを他のホームへ異動させ、新しいフロアリーダーをその新人から抜擢しているお粗末な人事が第三。これが絡み合ってどんなヒヤリハットが生まれたか?

夜勤明けである私は、8時に胃ろう径管を落とし始める。9時に申し送りを終え、それぞれの業務に入る。9時半に、新人フロアリーダーが、なぜか終わった胃ろうの片付けをした。チューブを外した事により、径管をする前か、した後か、分からない状況を作った。

新人介護職員が、以前10時に径管を始めていたため、ナースルームへこの利用者を誘導した。

常勤ナースAが欠勤した事により、慣れない派遣のナースが業務に当たる事になる。利用者が誘導されて来たので、径管を行おうとしてしまった。二重に栄養を胃ろうしてしまう所だった。たまたまフロアリーダーが気がついて事故にはならなかったが、これが本当のヒヤリハットだろうと思う。このヒヤリハットが、先に述べた理由が絡み合って事故になろうとしていた。間違えは、片付けてはいけない物を片付けたフロアリーダーが切っ掛けだ。全ては不慣れなスタッフが集まって起きそうになった事故と言えよう。毎日がこんな状況で、事故が起こらない訳がない。

歯車が噛み合わず、優先順位が間違ったまま、うちのホームは迷走を続けている。
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